ドラッカー名言録52
「あらゆるビジネス誌紙が取り上げる"トップと現場との距離"の問題。ドラッカー氏が語ると…。」
普通、経営学の本を読むと、「トップ・マネジメントは、現場の仕事をしてはいけない。オペレーション・レベルの仕事をせずに、会社全体の戦略や長期計画を練ったり考えたりするのがその仕事だ」と書いてある。
だが、現実にはこう書かれているルールに違反して、現業レベルの仕事をしているトップがかなりいる。特に中小企業においてはそうである。
例えば、顧客との折衝とか、あるいは細かい生産計画の策定とか、その他個別的かつ具体的な、いわゆる現業レベルの仕事をしているのではなかろうか。
ドラッカー氏の発言は、「トップも現場レベルの仕事を時にはせよ」。中堅あるいは中小企業のトップ・マネジメントの場合には、現実の日々の現業レベルの仕事をせざるをえないし、またすべきだ。
概して中小企業において、トップ・マネジメント層に位置する人間は少ないし、従ってまた大事な人的資源と言わなければならない。
そうなると、どうやって、持っている才能の中から、時間の中から、エネルギーの中から、最大の生産性と最大の効率性を引きずり出すかが、重大な問題になる。
経営者は、一般的に言って、かなり野心的かつ意欲満々であって、会社自体を成長させたいと願っているのが常である。
だが、企業自体を成長させるには、それなりの準備をしなければならない。また、その成長目標を挫折感なく達成するには、それへの準備が必要である。
トップ・マネジメントとして、−体、どういうことを知識として知っておいたらよいのか、また具体的に行動に移したらよいか、そしてトップとしての仕事を十分やりこなすと同時に、その仕事を楽しめるようにするにはどうしたらよいか。特に、最後の楽しめる≠ニいう要素は大切な点であるし、仕事が楽しくなければ、結局、すべてがだめになる。
中堅程度の規模の会社だと、トップに非常に優秀な人がいる。しかし、有能でいながら、会社全体を見わたすと、必ずしも適切に経営管理されていない場合が多い。なぜそのようなことになるのか。
その理由は様々だが、主な原因は、トップが確かに有能ではあるが、すべての分野にわたって有能ではないことにある。
自分が上手にできる分野、例えばそれが仕入れなら、仕入れはよくやれる。そうすると仕入れのみを大事に思い込んでしまって、自分があまり才能を発揮できない分野は、重要ではないと思い込みがちである。
人間という動物の場合、普遍的な天才はいないので、どうしてもそういう偏りが生まれる。だからこそのドラッカー氏の冒頭の発言になるのである。
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