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   ●ドラッカー名言録

 ドラッカー名言録22

知識は、本の中にはない

 

 知識は、本の中にはない。本の中にあるのは情報のみである。知識とは、それらの情報を仕事や成果に結びつける能力である。そして知識は、人間、すなわちその頭脳と技能のうちのみに存在するというのがドラッカーの主張である。さらにドラッカーは「知識は事業でもある」とも指摘し、物やサービスは、企業が持つ知識と、顧客が持つ購買力との交換の媒体であるにすぎないということも見抜いている。

 そして企業は、人間の質いかんによって、つくられも壊されもする人間組織なのである。労働はいつの日か、完全にオートメ化されるところまで機械によって行われるようになるかもしれない。しかし、「知識は、すぐれて人間的な資源である」と知識の重要性はトコトン強調する。

 また、人間能力に関しては、ほかの者と同じ能力を持つだけでは十分ではなく、そのような能力では、事業の成功に不可欠な市場におけるリーダーの地位を手に入れることはできない。そこで、他に抜きん出ること、すなわち、卓越性だけが利益をもたらすとし、さらに純粋の利益は、こうしたエクセレントな力でイノベーションを果たす革新者の利益だけであるともいう。

 しかも経済的な業績は、すべてディファレンシェーション、すなわち差別化の結果であるとする。したがって、差別化の源泉、および事業の存続と成長の源泉は、企業の中の人たちが保有する圧倒的に優れた独自の知識であると、再び知識という原点に戻ってくるのである。

 さらにドラッカーは、「人間は知覚したいと思う者を知覚する」という知識と、人間の知覚についての重要な点を指摘する。

 すなわち、人間の心は印象や刺激を受けると、すでに持っている期待の枠組みの中にそれをあてはめようとするからである。すなわち見たいものを見ようとする、いわゆる「自己実現の予言」が作用するという。

 こうした人間の心性ゆえに、人間の心そのものを変えさせようという試み、すなわち期待しているものを知覚させ、あるいは期待しているものを知覚させないようにする試みに対しては、すべて徹底した抵抗を受けると断ずる。それを排除するにはまず、相手が知覚することを期待しているものを理解する必要がある。

 その次に、これは期待とは違うという明白な合図、すなわち相手の心の連続性を中断するための強い衝撃が必要となる。知覚するものが期待していたものと違うということを相手に徐々に理解させていくという漸進的な方法などでは、コミュニケーションが機能しない。

 したがって、どうせやるならドカーンと一気にやれというすすめが導き出されてくる。段階的な方法では、かえって、相手の期待を逆に強化してしまうだけでなく、これから知覚するものが期待していたものであるという誤った確信を深めさせるだけである。

 したがって、コミュニケーションを成立させるためには、コミュニケーションの受け手が、何を見、何を聞きたがっているかを理解することが、まず送り手側に必要である。そうしてはじめて、受け手の期待を利用できるか、いかなる期待を利用できるかを知ることができる。あるいは、断絶の衝撃、すなわちコミュニケーションの受け手の期待を木端微塵に粉砕する。それによって、期待していないものが起こりつつあることを認めざるを得なくなるとして、知識の形成と破壊についての重要なヒントを投げかけてくれる。

 

   

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