ドラッカー名言録23
「有能さは習得できる」
ドラッカーはかねてから、折に触れて、経営者としての能力や効果的に行動できる有能さについてよく語ってくれる。今回の言葉は、筆者の長年のドラッカー語録ノートの中から抜いた一節である。
有能性は習慣でもなく、慣行でもなく、態度である。しかも、この態度は後天的に身につけることができるという説明がその後につく。
ドラッカーは「経営者には個室はない」という意見の持ち主である。ということは、四方壁に囲まれて、自分を一人にしてもらうなどという贅沢は許されないという議論をしている。自分の考えを他人に理解させるのが重要な仕事である以上、仲間の言葉を知らなければ自分を理解させることもできない。したがって経営者が有能であるためには、組織的に勉強をしつづけることによる自己教育に対して責任があるというのである。
そして、こうした学習は態度さえあれば、誰にでもできるというところから、今回のキーワードである「有能さは習得できる」という主張が導き出されてくるのである。
こうした知識を、ドラッカーはその昔、「ツール・ボックス」(道具箱)と呼び、「主な業務内容について学ぶのは私の仕事だ。したがって、少なくとも、私は道具箱とその中の道具を理解しておきたい。役に立つほどは使いこなせないかもしれないが、少なくともその使用方法くらいは知っている」という態度が必要だというわけである。
自分のプロパーの仕事だけでなくて、仲間の仕事についても若干でも知識を持たない限り、他の人々の行動の仕方や、そうする理由を理解することはできない。
しかも、そんな知識は、いざとなればすべて入手できるから不必要だなんていう傲慢さと無知は許されない。自分の本来の業務についての研究だけで自己満足することを許される経営者などは存在しない。
そうかといって、すべての人間が、あらゆる仕事についてのエキスパートになれなどといってはいない。しかし経営者たるものは、なんでもやってみる必要はないが、自らのところにある道具箱の中に何がはいっているかくらいは心得ていなければ、マネジメント担当者として落第であるとする。
ここにドラッカーの十八番(おはこ)の「強みの上に築け」論が導入されてくる。
そして有能さとは、自分以外の人間の中に強みを発見し、その強みの上に仕事を築き上げていくことでもあるとする。
自分以外の人間を有能にするのが、経営者としての自分の仕事でもあると自分に言い聞かせ、「自分のできないことは何か」とか「彼のできないことは何か」ではなくて、「自分にできることは何か」「彼のできることは何か」というように問題を突きつけていく態度をとる。
こうした「アティテュード(態度=心構え=行動への準備体制)」を身につけることにより、10回のうち9回まで有能性が発揮できると主張するのである。 |