ドラッカー名言録26
「企業経営のエッセンスは、何かに『卓越』することと、『決断』することである」
ドラッカーは、何かに「卓越」するには、本を読んだり、原料や機械を意のままに操作するだけでは達成できにくいとする。それは、人間の心と、人間の精神の質の問題であると言い切る。だから、金銭で買うこともできない。
それは、その代償として、一人ひとりの人間のみが支払える努力、決断、良心が請求されるからであると説く。
そして、企業がどの面で卓越しているかが、その企業に興味を抱いて従業員となる人の質をも決定する。したがって、有能で野心的な人間が求める職場は、自らが貢献し得る長所を備えた職場であるという。
自由社会では、人は常に会社を辞める権利を持っていることを忘れてはならない。企業の持つ特質は、またその企業の製品やサービスを買う人の質をも決定する。市場経済の世の中における消費者は、いつでも自分が気に入らないものを買わないでいられること、を忘れてはならないと手厳しい発言が続く。
この名言の後半の「企業経営のエッセンスは『決断』である」については、すべての決断は過去の経緯によって確かめられる事実などではなく、未来を対象にした意思決定であることを強調する。
こうした決定に常につきまとうものは、躊躇と疑念、論争と妥協、五分の成功率と五分の失敗率、辛くて地味な仕事と突如ひらめく素晴らしいインスピレーション、適当なところで手を引こうという誘惑と新しいものをトコトン究極まで見極めたいという誘惑、老人の持つ知恵・経験と若者の持つ情熱とエネルギー…などとの間の、絶え間ない葛藤である。
そして、何よりも、この決断には絶対に確実だということはないということであるとドラッカーは言い切る。しかも、その正誤・成否が明らかになったときには、すべてがもはや手遅れになっているとする。
多くの優れた経営者の話を聞いてみると、「私の決断は、ごく普通の確率からみても、正しいものより、間違ったもののほうが多いに違いない」と思い悩んでいることを知る人は少ない。
聡明なエグゼクティブでも、常に割り切れない不安と同居していることを知る人は少ない。多くの決定の背後には、何度かの決定が日の目を見ずにお流れになったことを知る人も少ないとドラッカーは指摘する。そして傑出するための決断ほど、経営者にとって難しいものはほかにないと喝破するのである。
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