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   ●ドラッカー名言録

  ドラッカー名言録3 

「予期せざる成功・失敗にこそ革新への源が」

 いまから15年ほど前にドラッカーは、第二次世界大戦後の約1250件の画期的新製品からカンバン方式のようなシステムに至るまでのイノベーションを徹底的に調べて、その源は何かを追求して、7つほどの「革新の源泉」を導き出した。

 そのリストのトップにあるのが、この「予期しなかった成功あるいは失敗」である。

 たとえば、このプロジェクトなら3%はいくと見込んでいたのが、予想に反して13%も伸びた。ああ、当たってよかったなどといって、ここで安心するのは一流の経営管理者ではない。それなりに人智を働かせて立てた予想がはずれたことの背後には、何か計り知れなかった新しいファクターが潜んでいるはずである……と考えることによって、イノベーションへの貴重なヒントや策が得られるとドラッカーはいう。

 そして、かつて来日してこの話をしたときに、古い事例だがと断って、今日の高級筆記具のマーク・クロスのボールペン誕生物語がその好例だと、こう話してくれた。

 あるとき、同社はあるイベントへの記念品として今日の金張りの高級ボールペンの原型となるものを来客に配ったところ、これが大好評。もっとないかという問合わせがしきり。ああ、喜んでいただいてよかったというだけで止まらず、これはいったいどういうことだろうと営業担当の副社長が調べた。

 すると、当時はペーパーメイトとかスクリプトとかいった安値頃のボールペンはあったが、エグゼクティブが使用するのにふさわしいハイクラスのものはなかった。フランス発のビックもようやく誕生したばかり。そこで、プレスティージのある高級ステーショナリの一環としてゴールドやプラチナのスリムなボールペンを開発したところ、これが大ヒットしたというわけである。

 まさに「予期しない成功」が一つのビジネスを生んだ事例である。

 したがって、ドラッカーはいう。予想外の成功や、その逆の失敗の教訓を決しておろそかにしてはいけない。そこを、これまたドラッカー好きな言葉でいうならば、「シンク・アウト(トコトン考え抜く)」ことによって、イノベーションへのきっかけが生まれ、革新への新しい道筋がみえてくるというのである。

 この言葉の中に潜んでいるもう一つのドラッカー的発想は、その現実主義的、あるいは難しくいうならば実存主義的考え方である。未来に絶えずひたと目を据えており、数々の大胆な予測と予見を成し遂げて、その鋭い未来透察力を賞賛されているドラッカーが、現実主義で、しかも「いま、ここで(ヒア・アンド・ナウ)」という実存的現在志向が強いなどというと、いぶかしく思う人も多いかもしれない。

 しかし、「明日何が起こるかは誰もわからない」「未来についてわかっていることは、たとえば人口動態のように、“いますでに起こっている未来”だけである」という言葉の端々からもうかがい知れるように、人智の限界を骨身にしみて了解しているドラッカーにとって、その心の底には人間の考えなどはたかが知れているという冷めた眼が光っていることも忘れてはならない。

 ギリシャ神話の中のシジフォスのように、大きな石を額に汗してようやく山頂に押し上げた途端にその石は転げ落ちることを知りつつも、再び石を運び上げるべく黙々と山を降りていく人間の姿と、こうした営みをドラッカーは冷徹な、しかし底には温かい眼でもってみているのだといえようか。

   

                          

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