ドラッカー名言録2
「表の風に吹かれろ!
さて、前回の「強みの上に築け!」に続く、今回の名言は、「表の風に吹かれろ!」である。これも、“強み論”と同じく、四半世紀以前から、ドラッカーが折あるごとに口を酸っぱくして説いている大事な戒めである。
すなわち、第1に企業はあくまでも社会の中で生きていく存在である以上、企業組織の外の情報、動き、トレンドに鋭敏な触覚を持っていなければ、結局のところ企業は衰退と滅亡への道を歩む、とドラッカーは強調する。
さらに第2に、会社というものは、外部社会から(ヒト、モノ、カネ、ヤリカタなどの)資源を預かり、それを内部の資源と上手に結合させて、製品やサービスという形で社会に提供することを本務とする。もしも、その製品やサービスを社会が受け入れてくれれば、社会はその受け入れ方を利益という形でもたらしてくれる……という考え方が、「表の風」論の底に流れているのである。
第3に、ドラッカーは「会社組織の中にあるのはコストのみ」という言い方で“表の風”について、別のアプローチから表現していることにも注目したい。
第4に、ドラッカー経営学の真髄の一つはマーケティングをベースとするが、これも、この「表の風」の議論の延長線上に現われてくる。
企業の使命は「市場の創造」というドラッカーのビジネス、マネジメントの大命題も、会社の死活や成否を握っているのは表、すなわち市場だという考え方が存在するからである。
したがってドラッカーは、その著『創造する経営者』の中で、顧客こそ事業であるとし、企業を外部からみることを強調し、そもそも企業が「適切な事業を行なっているか」を、いかにして知るかと問いかける。
「わが社の事業は何か。何であるべきか」を、いかにして知るかの問いに答えるには、事業を「外からみる」分析が必要となる、と主張する。
そして事業とは、市場において、知識という資源を経済価値に転換するプロセスである。事業の目的は、顧客の創造である。買わないことを選択できる第三者が、喜んで自らの購買力と交換してくれるものを供給することである。そして、完全独占の場合を除き、知識だけが、製品に対し、事業の成功と存続の究極の基盤たるリーダーシップの地位を与えてくれると明確に述べている。
そして、今日マーケティングと称されているものを厳しく批判し、せいぜい、販売予測、出入庫、広告を統合した体系的販売活動にすぎないと断じる。もちろん、それはそれでよいことではあるが……。
しかしそれらのマーケティングは、依然として、わが社の製品、わが社の顧客、わが社の技術からスタートしている。内部からスタートしているとして、外からの発想ではないとして、内部的発想をあくまでも排するのである。 |