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   ●ドラッカー名言録

 ドラッカー名言録34
「『研究者に求めることが少なければ少ないほど、成果もあがる』と考えるのは、研究開発をめぐる大きな迷信にしかすぎない」

 
 
ドラッカーはかねてから、R&D(リサーチ・アンド・ディベロップメント=研究開発)に関して、企業経営者がとかく抱きがちな数多くの迷信や盲信に対して警告を発してきた。上記の一文はその一つであり、代表的なものである。
 この問題点に関して、ドラッカーはさらに、こう言う。
 この考え方もR&Dをめぐってよくある間違いで、別の迷信である学位尊重主義と大して違いはないと断ずる。研究開発という仕事は、その成果をあげるには、それなりの独自のやり方があると思われているが、それは誤りである。
会計やマーケティングや生産といった他の仕事でも、これは同じことだとする。
 われわれは、R&D以外の他の職能の場合には、成果について責任をとらせるのにやぶさかではない。ところが、研究開発という仕事となると、そうはいかない。
「ところで、君は、ここでもらっている給料にふさわしいようなどんな仕事をやったかね?」などと研究者に意地の悪い質問をするのが、とてもいやなことだと考えているが、とんでもないとドラッカーは言う。
 実際上、研究開発にしても、他の仕事と同様に経済的な成果を要求すれば、研究者のほうも、最大の成果を生み出そうとするものなのだ。研究開発の中から知識、特に基礎的な知識を生み出そうとするときには、企業の経済的要求、そして新製品、新生産方法、新しい市場の上などに十分焦点を合わせて追求しなければいけないと説く。逆に、ビジネスライクに成果を求めないで、何の拘束もしないでいると、学問的な面でも、経済的な面でも、いっこうに成果は生まれてこない。
 人によっては、監督されると効果をあげることができないから、自立的にやりたいという人もいるが、そういう人には、会社から、仕事の明確な目標やゴールをはっきりと与えて一生懸命に働かせ、″意味のある結果″を生み出すように仕向けなければならないとすすめる。
 だが、こういったからといって、ペーパーワークがもっと必要だということにはならないとドラッカーはさらに警告する。研究部門のようなところでは、手続きが楽しいなどということが決してあってはならないのだとも皮肉る。
 これは、かねてからドラッカーが口を酸っぱくして説いている「本務主義」の現われである。研究開発なら研究に、看護業務なら患者のケアに、営業ならセールス活動に、というように取り組ませ、すべてをその本来業務に焦点を合わせない限り、成果は生まれぬという考え方である。
 だから、研究者にとって様式だ、定例リポートだなどといった形式や手続きではなくて、研究にとって大切な知識と時間を最重視すべきことを力説する。ところが実際には、そのどちらも足りないし、ますます少なくなっているのが実情なのだと慨嘆する。
 非研究的事務にうんと時間をとられる(おそらく許されるのは最大限一〇%なものだろうという)ような研究開発部門は、研究費を浪費しているのであるし、もっと悪いことは、研究員のエネルギーとビジョンを間違った方向へもっていってしまうのであると手厳しく指弾する。

   

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