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   ●ドラッカー名言録

ドラッカー名言録35 

 「eラーニングの成否はその組立て方いかんにかかっている」

 いま、大流行のeラーニングに関しては、かねてから甚大な関心を抱いているドラッカーは、自らも、いわばドラッカー経営学入門とも称すべきプログラムを一〇コースつくるほど熱心である。
前回お会いしたときも、これまでの本や教室での学習方法とはだいぶ違うが、eラーニングが、ビジネス教育の場も含めて、大きな潜在力を有していることを強調していた。しかし、この学習形態が一般化し、定着化するまでには、あと一〇年はかかるだろうと予測していた。
  いま、eラーニング"先進国"のアメリカでも、"中進国"の日本でも、一昨年あたりは、それ行けドンドンという状態だった。しかし、昨年はやはり情報技術のみが先行していることが反省されて、クラスルームと併用する、いわゆるブレンディング学習が強調されるようになった。そして、今年はeラーニングをコース(ウェア)や、狭いパッケージにのみ押し込めず、もっと広い角度から追求しようというスタンスに変わってきている。
  そして、今年六月にニューオリンズで開かれた全米人材開発大会でも、eラーニングは退屈だ、コスト安だというが、初期のインフラづくりに相当な金がかかる、トップの理解が得られない……などの不満がいっせいに吹き出ていた。
  そして今回はアーキテクチャー(組立て方)が最重要事ということに大方の意見が一致していた。
こうした近年の動きをいち早く察知していたかのように、ドラッカーは最近刊行された『ネクスト・ソサエティ』(上田惇生訳・ダイヤモンド社刊)にも引用されているごとく、eラーニングで肝心なことは冒頭に引いたように「組立て方」だと断言している。
  すなわち、eラーニングで最も工夫すべきは組立て方で、まず、学習者の関心を持続させることに心を砕かねばならないことを強調している。
  教室でならば、優秀なインストラクターは学習者の反応や感度を感知し得るレーダーを持っているが、eラーニング・システムには、これが欠けていることを指摘しているのだ。
  次に、できない学習者の面倒を、キメ細かくみることをしなければならないと強調する。
  そして第三に、本来は学ぶことの意味まで教えることをしなければならないが、いまのeラーニングには、これが欠けているとする。
  学習者にクリックさせるだけではダメで、一定のことを学ぶ意義や背景までも、なんとか工夫してコース内にビルト・インすべきことをドラッカーは指摘している。
  ドラッカーのeラーニング・コースを筆者も大学院生とともにテスト学習しているが、このコースにはドラッカーの肉声による英語の講義と日本語訳の両方が入っていて、進度管理をするための確認テストもかなり埋め込まれていて、間違えると、「トライ・アゲイン!」とドラッカーの声で叱られるのも楽しい。しかし、eラーニング全体としては博士が言うように、まだしばらくの年月を要しよう。

   

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