ドラッカー名言録83
「業績は、企業の内部には生じない」
効率的な企業は、業績(パフォーマンス)は常に企業の外部にあること、経済と社会環境の中にのみあることをよく知っている。
そして、企業の内部には原価(コスト)だけがあることも、十分承知しているとドラッカーは言う。だから、企業の内部でできることといえば、努力〔エフォット)のみである。しかし、そうした努力が価値(バリュー)に変わるか、それとも完全な浪費(ウェイスト)に終わることになるか、それらをコントロールすることはできない。
つまり、業績をコントロールできるものは、企業の内部には何一つないのだとドラッカーは喝破する。
業績は、企業の外部の顧客や市場に依存する。こうした顧客が持つ購買力を、企業側の努力と交換しようとする場合にはじめて、そこに価値や結果が生まれるのだ。
今日、企業における〈利益原点〉(プロフィット・センター)についてうんぬんすることが、依然として流行している。企業における主たる努力の担い手をはっきりと見極めようとする考え方は、たしかに健全なものではある。
しかし企業の内部には、利益原点は存在しない。あるものはただ、〈努力原点〉(エフォット・センター)だけである。そして、効率的な企業とその経営者は、このことを十分に知っている。
だから企業の内部の事柄に、自らがのみ込まれてしまうことを許さないのだとドラッカーは指摘する。
それには、何よりも実行力を必要とする。組織が大きくなると、それだけ内部の出来事に対して、より一層の注意が必要となり、また組織と人事、ポリシーと従業員などの問題は、より挑戦的な様相を呈してくるからだ。
しかしながら効率的な企業は、技術部門にせよ、販売、製造、さらに人事部門にせよ、業績を生む機能を持っていないことを心得ている。企業の内部には顧客も製品も投資も存在せず、また個々の業務ないし、部門のリスクも存在しないことを知っている。
だからこそドラッカーは、効率的な企業は例外なく、何らかの手段で企業の外部、すなわち市場と顧客、社会と経済など、業績をもたらす分野と直接に緊密な接触を保つことに成功していると説くのだ。
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