ドラッカー名言録84
「創造性開発を叫ぶだけでは、誠に空しい」
革新を行う能力の重要性がとみに認識され、独創性の開発とか想像力の強化とかが、しきりに叫ばれている。特に人事担当者や心理学者は、いろいろな提言を次々に繰り出してくる。こうした事態に対して、ドラッカーはかねてからあまり好感を抱いてはいなかった。
その理由として、オリジナリティーのある企業は、否が応でも必ず新しい面に日々進んでいかなければならないものとして現実に行動しているという事実を、ドラッカーは指摘する。
かつてデュポン社についてドラッカーは、同社のトップ・マネジメントは事業部に対して独創性が必要だとか、新製品を考えろとか、創造性をもっと発揮しろなどというお説教は絶対にしない、と語っていたことがある。それはデュポンの事業部長は、わずかでも新しいものを常に考えて用意していかないと、自分の仕事がいずれなくなってしまうことを肝に銘じて知っているからだという。つまり、古い製品や考えはどんどん廃れていく現実にしっかりと目を向けているのだ。
またデュポンでは、研究者は自分の時間の3分の1を、自分の担当の仕事とは一見、何ら関係のないことの研究調査に当てなければいけない。こうして常に新しいものに目が行くようなシステムづくりを行っているのである。
現にデュポン・ジャパンの社員は、自分の専門性の練磨だけではなくて、それ以外の分野の拡大強化に励むことを大いに奨励されているのだ。
ドラッカーは、こうした新しいものを考えるのは、「妙な言い方だが」と断った上で、ちょうど健康な子どもが食事をして排泄すれば、次に新しいものを必ず食べていかなければならないのと同じであると言っている。
実績を上げている企業や効率的な企業は、健康な子どもと同じように便通をよくしているのだと続ける。創造性の開発を、単なるお題目ではなく、日々のマネジメント活動にビルト・インさせておかないような企業は駄目な企業であり、新しい可能性を追求していて、障害に逢着しても臨機応変な措置が取れるようでなければお話にならない、と明言しているほどである。
そうできるのは、観念論者ではなく実行派の人間をこうしたことにあてること、適切な処理ができる能力を持っている優秀な人間をこれにあてるということを、第一義的な原則にしているところでなければならないと断言している。
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