ドラッカー名言録85
「人材は、企業規模とは無関係である」
毎年、優秀な業績を上げている企業は、ほかのそれほどではない企業に比べて、優秀な人材に恵まれているというのは、必ずしも真実ではない。すなわち、企業規模が大きいほど、中小に比べて、より優れた人間を雇い得るというのは間違いである・・・とはドラッカーが以前より断言していることの一つである。
人間を釣るのも、魚を釣るのも、同じ池の中で釣りをするようなものだと言う。
すなわち、釣りの上手、下手で多少の差はあっても、確率からみれば、大体、同じような人間がつかまるんだとドラッカーは面白いことを言う。
さらに、いろいろな採用方法を工夫し、さまざまなやり方を講じても、その結果に大差なく、ほぼ同じだと続ける。
だから効率的な企業が抱えている人材も、ほかの企業が擁している人材と、そう大して違わないと考えてよいという。
となると、一体全体どこが違うのか。それは、人材の使い方が大きく異なるのであると主張する。人材を本当に生産的・効率的に転換し得るかどうかに、相違はかかっていると考えるべきだというのだ。
だから、効率的な企業でも、真に役立つ人材は、それほど多くは有しておらず、その数は意外に少ないことに十分に気がつく必要がある。「人材」と称することができるのは、どの企業にも、そうたくさんはいない。どこでも比較的少数だという「厳然たる事実」にまず気づけとドラッカーは説くのだ。
すなわち、人材の不足をかこつのは、自分の会社だけでなく、どの企業でも同じであること、また、人材不足のせいにするのは、マネジメントの力不足から目をそらさせるためのものであることに気づくようにと論しているのだ。
こうした点をしっかりと認識すれば、冒頭に掲げたように、人材は企業の規模と無関係なのであるから、中小企業といえども、そんなに人材不足を嘆く必要はない。
ドラッカーがよく言うように、効率的な企業においては、業績は外部にしか存在しないことと、外部に表れることを、しかと心得ていればよいのだ。
そして、すべては使う方に依存することをよく承知し、人材不足を憂うのではなく、その使い方に焦点を当てて強みを伸ばすべきだと強調している。
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