ドラッカー名言録10
「アクション(行動)によるフォローアップ(追査)なきプロジェクト(計画)はパフォーマンス(実績)を生まない」
この5月末に、半年ぶりでドラッカー教授の謦咳(けいがい)に接する機会があったのが、その中で実際に出てきたのが、標記の一節である。博士の生の声の一端を皆さんにお伝えしたいので、今回は特にほぼ原語のままで掲載してみた。
どんな事業でも、仕事でも、プロジェクトでも、具体的な行動計画と、その実施(インプリメンテーション)がない限り、すべては単なる話合いや、希望的観測や、机上の空論で終わってしまうことを改めて戒めたのが、この言葉である。
実績、成果、結果を重んじるドラッカーの現実主義的な経営哲学においては、絶えず実際の行為や行動が伴うことを重視する。もちろん、調査やデータの探索や議論を軽んじるわけではない。衆知を集めて議論しあうことも、アイデアを出し合うのも、相互批判するのもよい。しかし、とどのつまりは、戦略もプランも、特定のシナリオなりアクション・プランにブレークダウンして落とし込むことと、さらに大事なのはそれを実践に移すことが出てこなければ、すべてはナンセンスのまま終わるという。
しかも、いくら実行しても何がどれだけなされ、どこがダメで、どこが思いもかけずよく、どれが未達成のままで、それはなぜというフィードバックが行なわれない限り、真の成果には結びつかないというのが、かねてからの主張である。これをいつも口を酸っぱくして説いているのである。
面白かったのは、ドラッカー博士の最近のコンサルティング活動に関して、上述のプロセスをどう当てはめているかについての発言である。
かつては、経営コンサルティングをした後に少なくとも10〜20ページのリポートを出していたが、最近はこれをコンサルタントとしての博士は一切やらない。その代わりにクライエント(依頼先)のほうで評価リポートを書いてもらう。
これは別に横着しているからではなくて、特定の問題点や企画や実践状況やその成果を知りたいからである。すると、到達、未達、要改善などの勘ドコロがこちらが勝手な思い込みで書くのよりも、ずっと生きたものとして浮かび上がってくるという。
そして、「ごくたまに『ブリリアントなアイデアをいただいてありがたいが、どうぞお引取りください』という依頼先も出てくるがね」と皮肉たっぷりに話していたのも面白かった。
人間は、とかくこうした当たり前のことを、当たり前のようにやることが苦手だが、実は、この当たり前のことを、その背後での苦労の跡を一切見せずに料理するのがプロとして一番難しい、と言い添えてくれたことも印象に強く残った。
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