ドラッカー名言録9
「中小企業が巨人≠ノ鵜呑みにされて消滅されるなんていうのは全くのナンセンスである」
ドラッカーは、以上のような大が小をつぶすという議論を耳にタコができるほど聞いてきたが、こんな予想は全く無意味だと、すでに30年前に断言してはばからなかった。
スモール・ビジネスは、どっこいしたたかに生きているのみならず、この20年間、アメリカで大企業以上に雇用を創出してきたことを指摘し、ベンチャーの企業も中小企業に託しているのである。
しかし、そうかといって、ただ単にノウノウとしていてサバイバルできるものではない。「小規模ながらも、ハッキリと限定された分野で自らの主導権を確立することによってのみそれは可能だ」ともいっている。
中小企業の強みの一つは、「最高経営者が、キーとなる要員全員について、その野心、願望、思考様式、行動様式、強みと限界、過去の実績と将来性をよく知り得ることにある」と説く。
しかし、ここで大事なことは、「だからトップが、こういうことをよく知るには、時間、とりわけ自由な時間が絶対に必要である」と強調している点である。
問題の処理に頭を悩ましたりせず、実際の用向きが決まっていない時間、自分の魂を自分の魂と呼べる時間がなければ、せっかくのこうしたスモール・ビジネスの長所も活かされないと説いていることに注目すべきである。
中小企業のトップについてさらにドラッカーは、「内部」の基幹要員と会う自由な時間の獲得とともに、他の誰にも委ねることができないもう一つの時間の確保、すなわち「外部」向けの時間をどうしてもとらなければならないとする。これは以前、本欄でも述べた「表の風に当たる」べき時間である。
つまり、最新のマーケット、顧客、技術に触れるための時間のことであり、これをないがしろにして「間違っても机に縛りつけられるようなことがあっては経営者として落第である」とすら断言してはばからない。
また、中小企業と大企業とのかかわりについては、お互いに取って代わるという存在ではなくて、お互い補い合う相互補完的存在だと位置づける。大企業は中小企業に依存し、中小企業は大企業に依存するという関係である。
この点は、特に昨今のようなアウトソーシングの活発化に伴って、ますます強まりつつあることを指摘する。
そのためには、社外重役を置くなどして社外の意見を取り入れて視野を広めることをつとに奨めている。そして、中小企業に対して、もう一つ厳しく述べているのは、同族会社の場合、「たとえ一族であったとしても、任に耐えない人にはポストを絶対に与えてはならぬ」という鉄則を守れと、口を酸っぱくして言っていることも忘れてはなるまい。
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