ドラッカー名言録12
「企業が、より大きくなる必要はないが、不断に、よりよくならねばならない」
ドラッカーは企業の規模についてのよし悪しを論じたりはしない。要は、量やサイズではなくて、その質であり内容だと、かねてから主張している。
その代表著書である『マネジメント』の中のこの一節も、そうした考え方を端的に表したものにほかならない。
ドラッカーはコンサルタントとしては、大企業を対象とすることが多かったが、中小企業や中小の非営利法人についても、かねてから相談にのってきたし、いまでも取り扱っている。
この“至言”に関して思い出されるのは、かつて、「大きくなることも決して悪くない。しかし、その大きくなるなり方が問題なのだ。悪性腫瘍のようにメッタヤタラに大きくなるのではダメだ・・・・・・・」と語ってくれた言葉である。
また、最近の底の浅いベンチャーブームに対しても、企業家精神が旺盛なのはよいのだが、自分の「ワーク・オブ・ビジネス(Work
of Business)=WOB」がどういうビジョンにより、どういう社会的貢献をしようとするのか・・・・・などを十分に考えずに事業を立ち上げるのには反対である・・・・・といった趣旨の発言をしていたのも思い出す。
ここでいう「ワーク・オブ・ビジネス」という言葉は、かつてよくつかっていたが、いまは単に「ビジネス」とだけ称することが多い。その中身は「事業の本質」ということである。
したがって、ドラッカーにとっては事業の本質とその質が重要なのであって、サイズではないことがここからも読み取れる。
しかも、単に額に汗して頑張るというだけではいけないのである。「努力は賞賛の対象にはなるが、事業活動は、規模の如何と関係なく、そこから生まれる成果、すなわち事業への社会の拍手喝采の度合いが問題なのである」という指摘も、ともに記憶しておきたい言葉である。
さらに同じ発想で「企業が生み出すのは、物でも観念でもなく、人間が値打ちありと認めるものである。いかに見事に設計された大きな機械でも、顧客に役に立たねば金属のスクラップにすぎない」とも発言している。
そして、企業はいつでも一種の冒険なのであって、それは、将来の、しかも極めて不確実な成果をあげるために現在の資源を投入することなのである。
したがって、こうした“賭け”としての企業は、闇の中への跳躍であるので、勇気と信念を必要とする行為なのである。
事業に関する決断は組織のサイズに関係なく、人を過去に拘束せず、未来の形成に一歩踏み込ませるものなのである、というのが、ドラッカーの事業の本質感なのである。
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