ドラッカー名言録16
「中小企業の最高責任者は、他の誰にも任せることのできない次の二つの課題に取り組む時間を必ず持てるように、自分の職務を構成しなければならない。
その一つは、『外部』向けの時間、すなわち、顧客、市場、技術のための時間であり、もう一つは、『内部(社内)』の基幹要員とじっくり会うための時間である。間違っても机にしばりつけられるようなことがあってはならない」
今回の引用はやや長いが、スモール・ビジネスの経営者にとって極めて大事なアドバイスを包含しているといえる。
ドラッカーがかねてから強調している、企業は「外部」によって活かされていること、したがって絶えず「表の風」に吹かれよということが、第一の時間に関する主張となって表れている。
そして、組織運営に当たっても、自ら社内のキーとなるスタッフのところに出向き、現場に自ら赴けというすすめである。
ドラッカー自身、かつてある百貨店のトップにコンサルティングを頼まれたときに、三日間、自ら売り場に立ったが、そこから得た理解と洞察は、社長や副社長の話よりもずっと意味のあるものだったと述懐していた。
そして、特に中小企業の場合は、人と金の両面で、大企業と違って限られた資源しか持っていないので、成果をもたらす分野に確実にその資源を注入して事業を展開しなければならない。
そのためには、各社のトップが、現場の動きへの鋭い嗅覚による独自の情報収集・処理、そして管理方式が必要であることを力説している。
その一つとして、通常は「外部」のことをよりやかましく説くドラッカーも、中小企業に関しては、スモール・ビジネスの強みであるキー要員全員に関する野心、願い、思考様式と行動様式、その強みと限界、その過去の業績と将来性をよく知るという利点をフルに活用せよと述べているのだ。
しかし、そのためにもCEO(最高経営責任者)は、時間、特により自由な時間が必要であるとする。つまり、これこれといった用向きが決まっていない時間をとることであり、「問題」の処理にわずらわされない時間をとるのだと指摘しているのである。
特に中小企業の場合は、小規模ながらも、ハッキリと明示され、限定された分野での主導権を発揮し、確立するための明確な戦略の存在が不可欠である。
それなるがゆえに、「中小企業は巨人に鵜呑みにされて消滅する」と、この100年間にさんざん言われたことを見事ハネつけてきたとドラッカーは言う。こうした権威者や専門家の予想は結局ナンセンスにしかすぎないとまで断じている。
中小企業は、100年前も、今も、ドッコイしたたかに生きている、とドラッカーは言う。
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