ドラッカー名言録30
「明日のエグゼクティブが学ぶべき3つの重要な事柄は、@自分で自分の面倒がみられること、A下(部下)のマネジメントではなくて、上(上司)のマネジメントをすること、Bそして、経営の基本を広く着実に身につけることである」
『ビズ・エド』(ビジネス教育)という米国のビジネススクール協会発行の創刊号(2001年11月−12月)の巻頭インタビューに載ったのが、この言葉である。第1の自分の面倒がみられるということは、(自己)責任感をしっかりと確立することであり、自分の強味をハッキリ認識することにほかならない。人事部などの世話をあてにはせず、自分のいる場所で期待されていることをよく承知して遂行することである。
第2の上役管理法は、部下の管理よりもずっと大事なことである。ということは、とりも直さず、自分がこの組織に対してどういう貢献をし、いかなる寄与をすべきかを問うことである。
第3の基本的なリテラシー(知識と技能)とは、会計だけとか、生産管理だけということではなく、組織の運営全体にかかわる基礎を身につけよということである。ドラッカーはこれを「組織リテラシー」と呼び、これはビジネススクールでの所定の教科をとるだけでは決して得られるものではなくて、実践的経験によって学べるものだとする。
そして、ビジネススクールでは、これを体得させるために、チームワークやグループスタディや組織での実習やプロジェクト処理などを行なわせる。
そして、このインタビューの中で、ドラッカーは、最近、かなり大きな企業で週に1回、6ケ月間にわたり、かなり面倒な価格設定(プライシング)の問題にかかわったチームのコンサルティングをした際の経験をこう話している。
年齢は27歳から40歳までの有能な人々の集まりで、実務経験も最低の人で5年はある。にもかかわらず、チームメンバーが組織を全体としてみることができないのに驚いたという。
そして、価格設定という問題も組織全体に関係するものであり、単にマーケティングや財務上の決定事項でないことにようやく気づいて、市場全体とともに組織全体をみることを学んだと語っている。
さらに、この後でドラッカーは、ビジネススクールのこれからのあり方についても示唆に富んだ発言をしている。
それは、マネジメント・ポジションは、将来においては今日よりも、ずっと少なくなるので、1つには、質が良く、より高能力な人材を育て上げることが大事であり、もう1つは、ビジネススクールの学生を単に既存の組織のCEOづくりに向けるのでなくて、自分で事業を立ち上げるような別のスペシャリストとしてのキャリアに向けて準備することが肝心だとしている点である。 |