ドラッカー名言録42
「経営管理の96%は、ルーティーン的な定例反復業務であることを、ゆめ忘れてはならない」
ドラッカーに、最近のマネジメントをめぐって気に食わないのは何か……と尋ねたときに返ってきたのが、今回引用したこの言葉である。
とにかく、マネジメントがいまやファッション化してしまい、次から次へと、やれダウンサイジングだ、リエンジニアリングだ、コア・コンピタンスだ、サプライチェーンだ、と、次から次へと新しいコンセプトだ、ニュー・スキルだ、新ビジネス・モデルだと打ち出してきている。しかし、マネジメントの大半は、日々の地道な管理業務をキチンとこなすことであることを忘れ去ってはいけない……と諭し、そこで出してきたのが先の発言なのである。
いろいろと勉強するのはよい。
しかし、マネジメントは流行の衣裳をまとうのとは違うのだから、身に合った着物をまとい、また、それが正しく着こなせるようにすることのほうが肝心だと主張するのである。
さもないと、いつも木に竹を接いだようなことばかりして、しっかりした樹木を育てることはできない。
ダウンサイジングだ、リエンジニアリングだといっても、これはすでに四半世紀も前に自分がマネジメントの革新と裏腹にある重要な要素は、廃棄(アバンドン)することであると述べたのと同じ趣旨であるとする。
また、コア・コンピタンスなども、同じく自分が「強み」のある本業と本務を磨き抜いて栄養失調にさせるな、と指摘したことと同じ線上にある発想である……とドラッカーは言う。
さらに、このところ口を開けばチームワークの重視を説くが、これも目に余るともいえる、上っつらの流行だと断じる。
成功し、真に効果性を発揮できる有効なチームを社内で数多く形成することは、決して一朝一夕でできるものではない。何年もかかるのに、チーム・ビルディング演習をやればインスタントにチームができると勝手に思い込んでいる。
チームというのは、なかなかうまくは動かぬ代物であり、それをマネジメントするのも難しい。チームの活用がその真骨頂を発揮するのは、ごく限られた状況下においてなのである。また、一口にチームといっても、高い凝集性と相互信頼の存在を前提とする卓球やテニスのダブルスのようなトップ・マネジメント・チームもあれば、各ポジションが最優秀水準の専門家で固められているベースボール型のチームもある。
また、ポジションも一応決まっているが、球の動きに対応しつつ相互支援の妙味を十全に発揮しないと勝てないサッカー型のチームもある。
それなのに、これまた、あまりにも安直にチーム、チームと騒いでいるのも気に食わないというのがその発言の真意である。 |