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ドラッカー名言録

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   ●ドラッカー名言録

ドラッカー名言録43 

 「企業は何よりも″アイデア″であり、″アイデア″を生むことができるのは個々の人間だけである」

 という言葉に続いてドラッカーは、勇を鼓して自ら思考し、"既成概念″にあえてそむける人なくして(少なくとも数人は必要だ)、その企業の成長と繁栄は望めない…と断言する。
そして、この企業の土台となるアイデアは、"発明≠ニ呼んでもよいし、"革新≠ニ呼んでもよいという。それは、新しい科学知識や技術の応用である場合もあり、あるいは経済現象を上手に読みこなした場合もあるとする。
実はこの極めて現代的な発言は昨日今日のものではなくて、いまから40年前の1964年に語ったものから採録したものである。いかにドラッカーが現代の企業経営の本質を早くから読み取っているかがよくわかる。大袈裟にいうならば、歴史的証言ともいえる言説である。
市場と革新こそビジネスの本質的使命であり、機能であり、それを担う企業家の重要性を見抜いた発言といえる。各時代において、時代の半歩先を見て進歩的なアイデアを発見し、顧客に快適さを与えるチャンスを生かすことがアントルプルヌールの骨子だとする。
この発言に続いてドラッカーは、企業とは、とどのつまり"賭け≠セと喝破する。すべての事業は現在の資源を未来の可能性に向けて投資するものである。したがって、あらゆる事業の企図も、もくろみも、"暗闇の中への飛躍(リープ・イントゥ・ダークネス)≠セと断じる。
アイデアの実現のためのこの"飛躍≠ヘ、いくら計算したつもりでも、結局は闇の中のジャンプであるからこそ、勇気と信念を必要とすると説くのである。事業に関する決断は、人間を過去に縛りつけるものではなく、不確定な未来の形成にあえて1歩踏み出すものなのであるとダメ押しする。
確実安全で、実現が容易で、安易なプロジェクトを選ぶのも1つの経営者としての選択ではあろう。しかし、あえてそうせずに、新しい工場の建設、新しい製品の開発、新しいサービスの実験、新しいビジネス・モデルの投入、新しい研究計画を提案するとすれば、自分の将来とまではいかないまでも、少なくとも自分の判断力と評価を賭けているといってよい。
今回、引用したドラッカーの言説からもよくわかるように、ドラッカーの企業経営論の底には、不安だが未来に自己をあえて投企(プロジェクト)するという、いわゆる実存哲学風の根本精神がいつも脈々と流れていることに気がつこう。だからこそ、ドラッカーが往年書いたデンマークの実存哲学者のキルケゴールをめぐるエッセイを、あえて最近の論文集にも再録したことの意味が見えてくる。
キルケゴールの有名な言葉「結婚したまえ、君は悔いるだろう。しないでいたまえ、君は悔いるだろう」。そして、前へ踏み出して結婚という行動を自ら選び取ること(未来への事業に踏み切ること)にドラッカーは"男の美学≠感じているといえよう。 

   

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