ドラッカー名言録56
「階層をなす組織の危険は、上司の言うことを部下がそのまま実行することだ」
「階層をなす組織に潜む最大の危険は、よく考えもしないで上司の言っていることを、そのまま実行してしまうことだ」
ドラッカーは、かねてから旧来のヒエラルキーに関しては、疑問を抱き、その落とし穴について色々と警告してきた。その中でこの一句は、よく読んでみると一番きつい発言であることが分かる。
むろん、ドラッカーもここ15年程の間に、従来のピラミッド型組織も機能不全に陥りかけてきたので、様々の改変がなされたことを指摘している。
このような組織がうまくいかない第1の理由は、背高のっぽ組織だと上からの指示が下に浸透するのに時間を要し、しかも内容が歪んで伝えられやすいこと。
第2に、コンピュータの発達により、上の命令を下へとリレーするだけのミドル・マネジャーは不要になってきたこと。
第3に、組織内外の風通しをよくして即効力をつけるためには、よりフラットな水平型組織への切替えがどうしても必要になってきたこと。
第4に、いわゆるアウトソーシング(外部委託)の増大によって、組織がよりスリムでアジャイル(敏捷)になってきたことが挙げられる。
しかし、こうした要因の変化にもかかわらず、階層や上下関係に縛られていて、さしたる考えもなしに上の言うことに、唯々諾々と盲従する部下の多いことを敢えて戒めているのが、今回の名句の趣旨なのである。
それでも、こうした弊害に陥らないようにするにはどうしたらよいか。ドラッカーは次のように提案する。
第1は、上司の言わんとすることの確認が肝心であると。
「こういうことを、しかじか、やるのですね」と念のため、上司の指示をできれば別の言葉に言い換えて確かめること。
第2は、上司も、必ず一定の期間をおいて部下にフィードバック(情報の差戻し連絡)を求め、自分からもフォローアップ(追査)をすることが大事である。
ドラッカーは、続いて、次のようにも言っている。
すなわち、「部下はいい加減な指示と、それを鵜呑みにすることからくる業績不良に失望し、いらだつ。しかも、指示間違いのマネジャーは大抵の場合、自分の指示ミスに気がついていない」と。
「各人が分担したことを全部合わせると、はめ絵のようにピッタリとおさまる全体像が生まれるようになっていることが、ぜひとも必要である」と、ドラッカーは語る。 |