ドラッカー名言録58
「金融・財務面の要請は、企業の成長速度の4倍速く走る。だからこそ、早めに手を打つことが必要だ」
「ギアは早めに入れよ」
この言葉は、ドラッカーが成長企業における金融・財務問題について語った際に発した一句で、特に早期警報(アーリー・ウォーニング)制度≠ノついて触れた発言である。
ドラッカーは、成長企業というものが、ある一定点にくると、まさに、その時点においてこそ1番伸びなければいけない時なのに、資金の面で財務的な危機に立ち至ることが多いことに、関心を促している。
彼は、こうした危機は、通常、大変深刻なものとなるとすら述べ、有望なグロウス・カンパニーだと思われていた企業が、こういった時点になると、資金繰りがつかないなどの苦境に陥って、売りに出されたり、よそに吸収されたり、ひどい時には蒸発してしまう、と戒めている。
また仮に、倒産や崩壊までの憂き目は見ないまでも、その傷が癒えないがために何年もの低空飛行を続けることがよく見受けられる、ともドラッカーは指摘する。
こうした危機を子細に分析してみると、それほどひどいミスを犯したとか、苦慮すべき問題に悩まされたのではないことが多い。その主な原因は、大抵、トップ・マネジメントが財務をよく知らなかったり、財務関係の人間の気心がよく分からないことによるというのが、ドラッカーの言い分である。
続けて、経営者が相手をする金融人とは、いつもビクビクしつつ安全パイを押さえておきたがり、金融関係以外の事業については理解しないタイプが多い、とも断ずる。
しかも、資金の面で新しい方式にシフトすることは、そう簡単にできるものではない。財務面に関して、成功裡に再構築するのには時間がかかるし、下手をすると永遠の課題″にすらなりかねない。
しかし、なるべく早く金融関係者のところへ行って、実際の問題が発生する少なくとも1年前ぐらいに色々と話をまとめて手を打っておけば、このような企業危機は訪れない。
ギアを入れなければならない時になって慌てて入れるのでは遅すぎる。着地なら着地の前に、離陸なら離陸する前にギアを入れる必要がある。
企業の財務構成も、言わば離着陸の際のギア≠ノ当たることを銘記しておくことが肝要である。特に経験則として、金融・財務面の要請は企業の成長速度の4倍くらい速く走ることを承知していないと、大火傷をする、とドラッカーは警鐘を鳴らしているのである。
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