ドラッカー名言録75@
「過去から脱却せよ」
ドラッカーが95歳でこの世を去ってから、すでに2ヵ月近く経った。過去40年近くにわたって、ドラッカーから学んだ中の重要なポイントの一つが、今回の名言である「過去から脱却せよ」だ。
ドラッカーは最近まで、この言葉をうるさいくらいに我々に説き聞かせていた。
ドラッカーは、効率のよい企業が必ず身につけている思考習慣の一つとして、この「過去からの素早い脱却」を強調する。
効率的な企業は、決してセンチメンタルではない。その製品や工程や市場に対しても、決して感傷的にはならない。物理的な物品に対してよりも、人々とその考え方にむしろ愛着と親しみを持つと、かつてから語っていた。
こうした企業においては、「これこそ我が社の今日を築き上げた製品である。したがって、我々はこの製品を放棄しないし、また放棄することはできない」などというような言い方は、口が腐っても言わないようにしている。
むしろ、そうではなくて「この製品も時々刻々流行後れ、時代後れになっている。したがって、どのくらい迅速に製造をやめて別な製品の開発に取り組めるか」という言葉を耳にするのである。
このような、本当に効率的なあり方を身につけた企業は、「○○のような製品の市場は、いつの世の中にも存在する」などという戯言は、口にしない。
逆に、「仮に成熟した製品の改良に、さらにより多くの資金や人材を導入したとして、果たして有効な場を発見できるだろうか」という発想を重視するのである。
ドラッカーはかつてから、自分のよく知っている効率のよい企業は、各製品や各業務の寿命は3、4年ごと、最近では1、2年ごとに再検討していると話していた。
そして、「この仕事をすでにやめているものと仮定して、今から我々はこの仕事に着手する気が果たしてあるだろうか」という問いかけをする。
もしも、この設問に対する答えが「ノー」である場合には、「では、一体どういう方法で迅速にこの仕事をやめられるか」という問題を提起するのである。
このように、過去からの脱却を絶えず心し、希望的な考え方には溺れず、何とか「若返らせる」という甘い見方をしないのが、適応力に優れた効率企業の実際なのである。
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