ドラッカー名言録76
「経営者に必要なのはキャラクターの高潔性だ」
経営者は、部下に好かれる必要は必ずしもないが、部下に尊敬されることは必要だと、ドラッカーは前々から言っている。また、部下から尊敬されるためには、頭が切れるというほどではなくても、てきぱきと効率のよい仕事の処理ができることが重要だとも強調している。
かつて、この発言をアメリカで聞いたときに、キャラクターの「高潔性」と、旧来の意味での「モラリティ(道徳性)」とは、どうも違うように思えるが、どういうふうに考えたらよいかと尋ねたことがあった。
これに対してドラッカーからは、「もう1つの『インテグリティ(人間としての正直さ、誠実さ)』とでも呼ぶべきもので、これがビジネスにおいても、人々の信頼や尊敬を勝ち得ると考えたい」という答えが返ってきた。
ここで思い出すのは、「ただし、いわゆる人間のプライベート面におけるモラリティだけを、そんなに目くじらを立てて問いただしているわけではない」とドラッカーが付け加えていたことである。
さらに、この品性に関連して大事なのは、何と言ってもやはり、その元にある「アントルプルヌールシップ(企業家精神)」であり、しかもこれは、過去におけるものよりもますます重要なものとして盛り上がってきていることを併せて考えたいと、ドラッカーは言っていた。そして、本当の意味での企業家精神について、われわれはその真髄をまだ充分理解していないが、これをめぐる知識の体系をまとめあげておくことがどうしても必要だと続けた。
過去100年間に書かれた、広い意味でのマネジメントに関する本は、既知のことや既存のことをどうやって管理するかという問題にそのほとんどのページを費やしているばかりだ。真の意味での企業家精神、つまり、まだ持っていないものまでも生み出し得るという企業家精神については、なかなかその本質をわれわれは掌握できていないと言うのだ。
特にこれから先は、技術的な側面と同時に、ドラッカーがかねてから強調している「ソーシャル・イノベーション(社会革新)」が生まれる機会も、今まで以上に多くなってくる。にもかかわらず、肝心要の企業家精神については、ほとんどと言ってよいくらい、その真髄を知らないままでいると言う。
だから意識的にこの面について、本をあれこれ読んだり、研究をしてはいるものの、まだまだ知らないことが多いと実感している。そうドラッカーが語っていたのが印象的だった。
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